第6章 desire
「あ、スマホ置いて来ちゃった…
夜中に何かあったとき、雅紀と連絡取れないと困ると思うんで取ってきちゃいますね?」
「ん、すぐ帰って来いよ」
心配する智さんが可笑しくてクスクス笑ってしまった。
「はい、分かりました」
階段を降り、玄関の前に立ってふと気がついた。
鍵閉められてたらどうしよう…
ドアノブに手を掛けると、鍵はまだ掛けられてなくて
二宮さんを起こさないようにそっと足を踏み入れた。
すると…
『…ん、ふっ…』
二宮さん?具合悪くなっちゃったのかな…
歩を進め、リビングのドアの前に立ち、ドアの隙間から中を覗きこんだ。
えっ⁉…雅紀と二宮さん⁉
「あ、んっ…雅紀…もっと…」
「和さん、今日はチュウだけだからね?」
そう言うと、雅紀は二宮さんの顔に近づいていく…
二宮さんは、薄く開いた唇から舌を覗かせてる。
唇が重なると角度を変えながら何度も何度もキスを繰り返してるんだけど…
唇が離れる時に、舌と舌が絡んでるのが見えた…
なに、あれ…
初めて見る光景から目が離せない…
それに二宮さんが凄く綺麗だ
更に激しくなるキス…二宮さんの腕が雅紀の首に絡み付いて引き寄せる。
「ん、あ…まさ…」
二宮さんが色っぽくって、ドキドキした…
そして、夕べ感じた体の奥のむずむずがまた始まった。
「翔?そんなところに突っ立って何してるの?」
ふたりの姿を、夢中になって見ていたせいで
玄関のドアが開いたことに気がつかなかった。
振り向くと智さんがすぐ後ろに立っていた。
「え?翔ちゃん?」
リビングから雅紀の声が聞こえた。
一瞬で現実に引き戻され、一気に顔が熱くなるのが分かった。
智さんはリビングのドアを開け中を覗くと、何が行われてたかすぐに分かったらしい…
「ニノ、寝てたんじゃないの?」
「寝てたよ?でも目が覚めちゃって…」
「目が覚めてすぐに盛るなよ…」
「だって目の前に雅紀がいるんだもん、したくなるじゃん…」
「はいはい…」
「で、どうしたの?帰ったんじゃなかったの?」
「翔が、スマホ忘れたって言うから取りに来た」
智さんがサイドボードの上に置いてあったスマホを手に取る。
「それじゃ、お邪魔しました…あ、玄関の鍵閉めとけよ」
リビングを出て俺の手を引き、部屋を後にした。