第6章 desire
「ほんとにベタ惚れだな、智」
二宮さんが可笑しそうに笑った。
「悪いかっ」
智さんが少し剥れてるけど、嬉しかったりして…
「いいえ~、翔ちゃんには、そんくらいアピールしないと駄目でしょ」
「そうですよねぇ。俺も中学の時、アピールしてるのに全然気がついて貰えなかった」
「は?相葉、なに言ってんの?」
智さんが驚いた。もちろん俺も…
そんな話、聞いたことない。
「雅紀、冗談はやめてよ」
「冗談じゃないよ?
俺、中坊の時、翔ちゃんの事、好きだったもん…
でも、翔ちゃんあの頃まだ『さとくん』のこと想ってて、全然相手にしてくれなかった」
「誰?『さとくん』って?」
「翔ちゃんの初恋の人…小1の時に好きになったって言ってた」
「ほぉ~、初恋の人をずっと想ってたんだ?
やっぱり可愛いねぇ、翔ちゃん…
でも、流石に大人になったら現実を見たって訳ね?
今じゃ、智の方が好きでしょ?」
「あ、えと…」
「まさか『さとくん』の方が好きなの?
智、思い出に負けたんだ」
「おい、勝手に決めるなよ…」
「だって、翔ちゃん答えに詰まってるじゃん」
「あ、違うんです…」
「いいんだよ?翔ちゃんほんとのこと言って。
大野さんよりも『さとくん』の方がいいって言っちゃえ」
「違うってば!同じなの!」
「同じくらい好きなの?それは狡い答えだなぁ」
「だから違うってば!同じ人なの!
『さとくん』と智さん!」
「…は?」
「…え?」
雅紀と二宮さんが目を見開いたまま固まった。
智さんは、俺の肩をそっと抱き寄せ、ふたりに向き直ると「ふっ」と可笑しそうに笑う。
「どうもはじめまして、俺が翔の初恋の人の『さとくん』です」
「「マジでーっ⁉」」
ふたりの声が綺麗にハモった。