第6章 desire
「お疲れ~」
「お疲れさまで~す!」
雅紀と二宮さんが缶ビールを片手に発声すると
「お前ら何もしてないだろ」
大野さんの突っ込みが入る。
「だって手伝い必要ないっていうからねぇ?」
「そうですよ~、俺たちちゃんと声かけましたよ?」
「ふたりのお邪魔になるかなぁと思って遠慮したのにねぇ」
「ひど~い、大野さん…」
「…もういいよ…悪かったな…」
若干呆れ気味の智さん…二宮さんに口では敵わないって言ってたな、しかも雅紀とコンビ組まれたら言い返す隙もない。
「ねぇねぇ、こんなすぐ近くに住むならさぁ一緒に住んじゃえばよかったんじゃないの?」
「げほっ!」
二宮さんに聞かれ、智さんが飲みかけのビールを吐きかけた。
「あ~もう、汚いなぁ」
「お前が急に変なこと言うからだろっ」
「智さん、はい」
ティッシュを何枚か抜き、智さんに差し出した。
「翔ちゃん出来た嫁~、ほんと智には勿体ないなぁ」
「なんだよ勿体ないって…」
「えー、だってさぁ、こんな可愛い子、なかなかいないよ?」
「そんな事、嫌ってほど分かってるよ」
「ははっ、実感こもってんなぁ…手に入れるまで苦労したんだ?」
「……した」
「そんな事ないですよ…俺、他に好きな人いなかったですもん」
「翔に好きな人がいたかどうかじゃなくて、翔を好きな人がいっぱいいるの」
「まぁ、聞きました?雅紀さん。
『翔』ですってよ?この人、会社じゃ『櫻井』なんて呼んでるくせに、今しれっと『翔』って呼んでましたよ」
智さんが、しまったって顔をした。
「ほんとですね、和也さん。
普段から『翔』って呼べばいいのに…
プライベートだけって、なんか逆にイヤらしいですね」
「お前らウザい…だから会社では名前で呼ばなかったんだよ」
「え、そんな理由だったんですか?」
「そうだよ?こいつらに弄られると思ったから」
「なんだ…」
「どうした?」
「智さん、仕事とプライベート切り分ける人なんだと思ってました
だから会社では距離を置いた方がいいのかなって」
「そんなこと思ってたんだ。ごめん、違うから…
距離置くどころか、いつでも側に置いておきたいくらいだよ」
「いやー!聞きました?雅紀さん。今のデレた発言!」
「聞きましたよー。側に置いておきたいですって…デレデレですね」
「……マジでウザい」