第6章 desire
翌日、不動産屋さんや業者さんが来て、次々と引っ越しが進んでいく。
合間合間に、智さんの部屋から荷物を運び込み、夕方には何とか生活出来る状態になった。
「智さん、ありがとうございました」
「いや、思ったより早く終わって良かったよ」
「はい。荷物も実家から全部運んだ訳ではないですし、必要な物があれば、徐々に揃えればいいかなって思ったので」
「それでいいんだよ、余計な物買っちゃうと勿体無いし」
「そうですね」
『ピンポーン』
部屋のインターフォンが鳴った。
「あれ?まだ誰か来るんだっけ?」
「いえ、もう全て業者者さんは来たはずですけど…」
モニターを覗くと、そこに写っていたのは
「え…雅紀と二宮さん?」
「は?なんであいつら…」
『翔ちゃん、ヤッホー』
『翔ちゃん開けて~』
二宮さんに言われ、ロックを解除した。
再びインターフォンが鳴り、玄関のドアを開けると雅紀と二宮さんが勢いよく入ってきた。
「翔ちゃん、引っ越し祝いに来たよ~」
二宮さんがニコニコの笑顔でそう言うと、雅紀が手に持っていた袋を俺に差し出した。
「はい翔ちゃん、ご飯まだでしょ?
適当に買ってきたから食べよう。
引っ越し疲れたでしょ?ビールもあるからね!」
「あ、ありがと…」
「お前ら、なんでここがわかったんだよ…」
俺の後ろから、智さんの不機嫌な声。
「智ん家、来たことあるじゃん」
「いや、じゃなくて、この部屋の番号…」
「えー、だって智この前『俺の真下の部屋が引っ越しして出ていく』って言ってたもん」
「え、俺そんな事言った?」
「うん、言ってたよ?翔ちゃんに」
智さんは「はぁ~」と溜め息をついた買って
「お前の耳どんだけいいんだよ…」
「ふふっ、さぁねぇ…それよりさぁ、折角お祝いに来たんだから上がらせてよ」
「あ、すみません…どうぞ」
「「おっ邪魔しま~す!」」
ふたりが楽しそうに声を揃えて上がってきた。