第6章 desire
食事を終えふたりで洗い物をする。
最初に食事をご馳走になった日、『せめて片付けはやらせてくたさい』って言ったのに『ひとりで待ってるの寂しいから一緒にやろう』って言われて…
そんな言い方されたら断れないの分かってるくせに…
でも実際、肩を寄せ合い洗い物をする時間も嬉しかったりするから、これも智さんに甘えさせて貰うことにした。
片付けが終ると順番にお風呂を済ませ、後は就寝するまでゆっくりと晩酌をするだけ…
この時間が今の俺にとって、一番好きな時間で一番幸せな時間でもある。
ソファに座り、智さんに寄り添うように近づくと
智さんは微笑んで、そっと肩を抱き寄せてくれる…
「明日からは平日も一緒に飯作ろうな」
「いいんですか?仕事でお疲れなのに…」
「だって、飯食うのは一人だって二人だって一緒だろ?むしろ一人より二人の方が作り甲斐あるし」
「それはそうですけど…」
「まぁ、翔が嫌だって言うなら、無理にとは言わないよ?」
智さんがそんな事を言うから、慌てて首を横に振った。
「嫌じゃないですっ!俺はいつでも智さんと一緒にいたい」
智さんは少し驚いた顔をした後、ふっと笑い俺の頬に触れた。
「そんな目一杯否定しなくても大丈夫だよ…
翔の気持ちを疑ったりとかしてる訳じゃないから
ただ、一人の時間もあった方がいいのかな、って思っただけだから」
「すみません…素直に嬉しいって言えば良かったんですよね…
智さんに迷惑掛けたくなくて、遠慮したから…
遠慮するなって言われてるのに…」
智さんは、俯いてしまった俺の頬を両手で包み上を向かせる。
「もぉ…そんなことで落ち込むなよ…」
「だって…智さんに嫌われたくない…」
「嫌うわけないじゃん。
翔が俺を嫌いになることはあっても、俺が翔を嫌いになることはないから」
「俺だって智さんを嫌うことなんてないです…」
「ふふっ、ありがと…」
智さんの顔が近づいてきたから、目を閉じると、智さんの唇が一瞬触れた…