第6章 desire
金曜日の夜、実家に残ってた衣類を鞄に詰め、智さんの部屋にお邪魔した。
明日来ても良かったんだけど
最近週末は、智さんの部屋で過ごす事が増えていて、今日も『どうせ明日の朝早く来るんだから泊まってけよ』って言う智さんの言葉に甘えさせて貰った。
二宮さんが『甘々』って言う通り、俺はだいぶ智さんに甘やかされてるな…とは思うんだけど
遠慮してたら智さんに『恋人に変な遠慮はするな、じゃないと長続きしないよ』と、半分脅されぎみに言われてから、自分が言われて嬉しい申し出に関しては慎んで受けることにした。
智さんも喜んでくれてるし、甘えるって悪いことじゃないのかも、と智さんと付き合うようになって思うようになった。
エントランスでインターフォンを押し、自動ドアを開けて貰い、智さんの部屋のへ向かうと
玄関でインターフォンを押す前に、智さんが「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれる。
何度経験しても嬉しくて、ついつい顔が緩んでしまう。智さんといると、なんでも幸せに感じてしまうのは俺だけなのかな…
智さんも少しは同じ気持ちでいてくれてるのかな…
「お邪魔します」
いつもの様に玄関に入り、鍵を閉め上がらせて貰った。
「ふふっ、なんかいいね…」
智さんが嬉しそうに笑った。
「何がですか?」
「ん、そうやって当たり前に翔が鍵を閉める様になった事…」
「え、そんなこと?」
「うん、そんなこと…俺ん家で過ごすのが定着してきたって感じで嬉しくなる」
智さんが照れたように笑うから、俺も恥ずかしくなった。
さっき、俺が思ったのと同じ様なことかな?
智さんに笑顔で迎えられるのが嬉しいように、智さんも俺の些細な行動を嬉しく思ってくれてる?
智さんが大好きだった『さとくん』だって知った時は、これ以上幸せなことは無いって思ったけど
ふたりでいれば、幸せって尽きることないのかも…