第5章 rival
「翔、なんで好きな人に他に好きな人がいるって知ってんの?」
「本人がそう言ってるの聞いたから…」
「それってどうゆう状況?お前そいつに気持ち伝えて、そう返事貰ったの?」
「…気持ちは伝えてないです…その時はまだ、自分の気持ちに気づいてなくて…」
「じゃあなんだって言ってたの?」
「他の人がその人に告白して、それを断るためにそう言ってて…」
「…なるほどな、で、それを自分の事だとは思わなかったんだ?」
「思わない…だって絶対違うから…」
「どうして?」
櫻井は視線を伏せ、悲しそうな顔をした。
「初恋の人だって言ってたから…」
「初恋?!あんたも初恋引き摺ってんの?」
松岡さんが驚いたように俺に聞いてきた。
「え?なんで俺?」
「松岡さんっ!」
櫻井が顔を紅くして叫んだ。
「あ、わりぃ…いや、似た者どうしだと思ってびっくりしたもんで、つい…」
櫻井は顔を紅くしたまま、恥ずかしそうに俯いた…
そんな櫻井の様子を見て漸く分かった…
松岡さんが呆れる訳だ…
櫻井の好きな人って俺のこと…なんだね?
いつから?いつから俺のことそんな目で見てた?
ずっと櫻井のこと見てたのに、気がつかなかった…
「ごめんな…」
思わず心の声が漏れた。
弾かれたように顔をあげた櫻井…
「謝らないでください…智さんは何も悪くないんですから…」
「ううん…松岡さんが言うように、俺が鈍いのが悪かったんだ…
俺が櫻井に勘違いさせた」
「勘違い?」
「ん…初恋の相手を、今でも想ってるって言ったから」
「嘘、だったんですか?」
「嘘じゃないよ?あの時言ったことは全部事実…
16年前の初恋の子と再会したのも事実だし、その人をいつの間にか好きになってたのも全部ほんと…
勘違いさせた原因は、その相手が再会したことに気がついてないのに教えてあげてなかったから…」
俺は櫻井の首に下がってる石を持ち、櫻井を見詰めた
「お前にこの石あげたの、俺だよ?…さくちゃん」
そう言って微笑んだ。