第33章 シルキー
「うんっ、うまいっ!」
櫻井さんのお薦めの唐揚げ定食を頼み揚げたての唐揚げを口に頬張った。
「良かったぁ、お誘いしたのはいいけど定食屋ってどうなのかな?って後から思っちゃって」
「いや、マジで旨いよこの唐揚げ。連れてきて貰って良かった」
「ほんとですか?この店、何でも美味しいんですよ?今度は違うメニューも試してみてください」
「それって、また一緒に来てもいいってこと?」
そう聞くと櫻井さんは一瞬固まったあと頬をピンクに染め恥ずかしそうに頷いた。
「…あの…大野さんさえ嫌じゃなかったら…」
「全然嫌じゃない。毎日でも来たいくらい」
「そんなに気に入って貰えたんですか?この店…良かったぁ」
「いや、もちろん店も気に入ったけど…」
それよりも櫻井さんと一緒に居たい、って言ったらどう思うかな?
唐揚げを口に運びながら小首を傾げて俺の言葉を待つその仕草…唐揚げの油で唇が一段と艶々で、なんだったら唐揚げよりもそちらを食べてしまいたい。
こんな危ない考えをしているってバレたらもう二度と会って貰えない?
「大野さん?食べないんですか?冷めちゃいますよ?」
「あ、食べる食べる……けほっ…」
慌てて食べたらむせてしまった。
「大丈夫ですか?ごめんなさい、俺が急かしたから」
申し訳なさそうに俺に水を差し出してくれた。
「いや、櫻井さんのせいじゃないから」
「でも…」
「ほんと気にしないで…」
心配そうに俺を見るからニコッと笑い掛けると櫻井さんは小さく微笑んだ。
「優しいんですね、大野さんって…」