第33章 シルキー
「だからそういう奴らを今まで排除してきたんだって」
「いい人だったんだ…」
「なに?俺のことヤな奴だと思ってたの?」
ヤバッ!心の声が漏れた。
「いやっ!ヤな奴と言うか、ある意味恐い人と言うか…」
「ははっ、あんた正直だな。カズがいう通り裏表は無さそうだ」
「もぉ、潤くんってば笑ってないでよ。俺、恐い人って言われたんだよ?」
「だってカズ、こえーもん。だから安心して翔さんのこと任せておけるんじゃん」
「そうかも知れないけどさ、褒め言葉には聞こえないよ」
「いいんだよ、カズは俺の前でだけ可愛くなってれば。じゃなきゃお前だって体狙いの奴らに狙われるぞ?こんなに気持ちいい肌してんだから」
そう言うと潤くんはカズくんの首筋を何度も優しく(やらしく?)撫でた。
「あ、ん…もぉ~潤くんってば、こんなとこで止めてよ…」
「カズの場合は肌だけじゃないしな?」
カズさんが頬をピンクに染め、目を細めて潤くんを見つめるその表情はやたらと色っぽくて目のやり場に困る。
「ここで可愛いカズ見るわけにいかないから家に帰るまで我慢な?」
ここで始められたらそれこそ目のやり場がないだろ。
「うん…ねぇ、早く帰ろぉ?」
潤くんをうっとりとした目で見上げるカズさん、俺の存在なんてもう忘れられてるな。
俺も今日は諦めて帰るとするか…
「カズくん、まだいるの?」
その時、俺の背後から会いたかったあの人の声が聞こえた。
「あ、翔さん。もう帰るとこ」
俺が振り返り櫻井さんを見ると櫻井さんは少し驚いたようだった。
「えっ!大野さん?どうされたんですか?」
「えっ、あの……櫻井さんと話しがしたいなぁ、なんて…」
「うわっ…つまんない誘い文句…」
カズさんの小さな呟き。悪かったなつまらなくって…急な登場に驚いて気が利いたセリフなんて出てこなかった。
「昨日のクリームお肌に合いませんでした?」
心配そうな表情をしたから俺は慌てて否定した。
「いやっ!凄く良かった!ほら、スベスベでしょ?」
櫻井さんの前に腕を出すと俺の腕を優しく撫でてた。
「ふふっ、本当…よかった合うものをご紹介できて」
櫻井さんに触れて貰えたことと嬉しそうな微笑みを見られただけでも今日は来た甲斐があった。