第33章 シルキー
「カズ、7時過ぎたけど仕事終わった?」
店のドアが開くと同時に声が聞こえた。
俺が振り返ると濃い顔をした人物と目が合った。
「あ、お客さん?ごめんな」
「ううん大丈夫…もう帰るだろうから、ちょっと待ってて潤くん」
「大丈夫ってお前、そんないい加減な接客してたら翔さんに迷惑掛かるだろ…」
苦笑いをするこの人物も櫻井さんの知り合いなのか?
「その翔さん狙いなんだけどこの人」
『カズ』と呼ばれた色白の彼がそう言うと急に『潤くん』の雰囲気が変わった。
「翔さん狙い?」
ジロリと俺を見る視線が恐い。
「この人の言い付けなんだ。俺が見張り番してるのって」
見張り番って…
「あの、あなたたちは櫻井さんとどういったご関係で?」
「潤くんは翔さんの学生時代の後輩。俺はここの常連客だったんだけど、ここの商品に惚れて店の手伝いするようになったの。
ここで潤くんと出会って俺たち付き合い始めたんだよねぇ」
カズさんと潤くんはお互い顔を見合わせニコッと笑った。
カズさんが言ってた彼氏さんか…
俺相手だと恐い態度をとるふたりだけどなんだかいい感じだな。
「で?あんたはどういうつもりで翔さん狙ってるの?」
「どういうつもりって言われても…まだ昨日会ったばっかりだし。ただ素敵な人だったからまた会いたいなと思って会いに来た」
「ふ~ん、で?カズはこの人のことどう思う?」
「悪い人では無さそう…裏表無さそうだし、翔さんの肌狙いでも無いみたいだし」
「肌狙い?」
「さっき言ったでしょ?あのキメ細やかな肌…間違いなく最高の抱き心地よ?この店にくる男はそういうことにも詳しかったりするから翔さんの肌を狙ってくる輩もいるって訳。まぁ所謂カラダ狙いってやつ」
「なんだと⁉」
許せん!そんな理由であの人を狙うなんて!