第33章 シルキー
あの後姉ちゃんから仕入れた情報によると櫻井さんは俺の一つ下で、今は恋人はいないそう…
店は平日は夜7時までしかやっていなくて、だから姉ちゃんは閉店に間に合わないから俺に頼んだんだって。
恋人なし、か…俺が一番欲しかった情報を得てひと安心。
お喋り好きな姉ちゃんにまたまた感謝。
俺は櫻井さんが『いつでもどうぞ』って言ってくれた言葉の通り、翌日の仕事帰り櫻井さんに会うために店に寄った。
それなのに…
「いらっしゃいませ」
俺を出迎えてくれたのは櫻井さんではなかった。
もうひとりいるって言ってた人?
「何かお探しですか?」
カウンターの中から声を掛けるその人もまた色白で肌が綺麗。
「あの…今日は櫻井さん、いらっしゃらない?」
そう言うと今まで笑顔で対応していたその人物の表情が一変した。
ジロッと俺を睨むように見ると『はぁ~』っと溜め息を吐く。
「あんたも翔さん狙い?」
あんたも?『も』ってことは他にもいるってこと?
まぁ、そりゃそうか…あれだけの人を周りの人間がほっておくはずがない。
「翔さん狙いなら悪いけど今日は翔さん来ないよ」
「今日はお休み?」
「そ…ひとりで店やってたら休む日無いでしょ?
だから週2日だけ俺が店番やってんの。
常連になると翔さんがいない日わかってるから翔さん狙いの人は来ないんだけど、あんたまだそこまで知らないんだ」
「昨日初めてここに買い物に来たから…」
その人物は驚きの表情を見せた。
「はぁ?昨日が初来店で今日また来たの?中々の強者だね?
それだけ翔さんに惚れたってことか…」