第33章 シルキー
家に着いて姉ちゃんに紙袋を手渡した。
「ありがと、助かったわ」
「礼なら要らねぇよ」
今の俺はすこぶる機嫌がいい。
なんてったって素敵な出逢いをしてきたばかりなんだから。
「気持ちワル…なんなのそのニヤけた顔…
いつもだったら頼まれごとすると不機嫌丸出しなのに」
「何とでも言え…今日は何言われても怒らねぇよ」
姉ちゃんに頼まれなかったら永遠に行くことなかった店だもんな。
「ふ~ん、なるほどねぇ~あんたでもやられたかぁ…」
ニヤニヤしながら俺の顔を見た。
「なんだよ…」
「そっちの袋、あんたの?」
俺が手にしてる紙袋を見た。
「そうだけど?なにか問題でも?」
「あんた今まで肌ケア商品なんて買ったことないでしょ」
「だからなんだよ…別にいいだろ?俺がクリーム使っちゃ悪いのかよ」
「悪くはないわよ…ただねぇ、ガサツなあんたがボディーケアするなんてねぇ…
なにかよっぽどの事がなきゃそんなことするとは思えないんだけどぉ」
「………」
さすが姉ちゃん…俺のことを良くわかってらっしゃる。
「櫻井さん」
不意に彼の名前を出されビクッとした。
「って男の人なのに綺麗よねぇ~。あんたもそう思わなかった?」
ニヤニヤしながら聞いてくる姉ちゃん。
あ~もう完璧バレてんなぁ…これだから女は怖いんだよ。長年の付き合いだ、無駄な足掻きはやめよ…下手に足掻くと後が恐ろしい。
「…はい、思いました」
素直に認めた俺を得意気に見る。
「あんた分かり易すぎ…まぁ、あんたには高嶺の花だと思うけど、精々頑張りなさいよ」
ふんっ!言われなくたって頑張るさっ!