第5章 rival
家に帰り晩飯の準備をしながら櫻井を待ってたんだけど、予想以上に遅い…
確かに慌てるなって言ったけど、櫻井の事だから絶対急いで来ると思ったのに。
気になって携帯を手に取るとLINEが届いてた。
『今、駅に着きました。
松岡さんの所に寄って行くので、後15分程でおじゃまします。』
着信を見ると今から30分近く前…ちょっと遅くないか?
携帯と鍵を手に取って、家を出た。
なんで松岡さんのところなんて行ったんだ?
そんなこと、一言も言ってなかったのに…
逸る気持ちから、いつの間にか走り出してた。
松岡さんの店が見えた…電気が落ちてる?
店、終わってるのか?
ドアの前に着くと《close》の看板…店内に小さな明かりが見えた。
ドアノブに手を伸ばした瞬間、中から…
『…やめっ!やだっ…さとっ!』
櫻井の声⁈
慌ててドアを開けた。
薄暗い店内に目を凝らすと、カウンターの奥で松岡さんに壁際に押さえ込まれてる櫻井がいた。
駆け寄って松岡さんの肩を掴み、櫻井から引き離した。
「なにやってんだよっ!」
松岡さんから隠すように、櫻井の前に立った。
「なにって見てわかんだろ?キスしようとしただけだよ」
松岡さんが苦笑いをした。
「櫻井、嫌がってんだろ?!」
「そんなこと言われても、こっちだって我慢の限界なんだよね?
ずっとアプローチしてんのに、全然気がつかないで…今日だって安心しきってひとりでノコノコ来るし。
言って分かんないなら態度で示すしかないでしょ?」
「だからって、無理矢理していいことじゃないだろ」
「無理にでもしないと分からないんだよ、翔は…
キスしたら、俺のこと好きって思うかもしれないだろ?」
「そんな都合のいいことあるかっ!」