第33章 シルキー
カウンターの後ろの棚から紙袋を取り俺の前に置いた。
「お姉さまのご注文の商品はこちらになりますね」
紙袋を開いて中を見せてくれた。確かにスマホに送られてきた写真と同じ品物。
「ありがとう、助かったぁ。
俺じゃいくら探しても見つけられなかったよ」
「男性の方ってこういった物にあまりご興味ないですからね、仕方のないことです」
フワッと笑うその笑顔に胸がキュンっとなった。
「あの…このお店ひとりでやってるの?」
「基本はひとりです。もう一人いるんですけど手伝い的な感じなので大抵店にはひとりでいることが多いですね」
「若いのに自分で店をやってるなんて凄いな」
「昔からの夢だったんです」
「店をやることが?」
「お店をやること自体ではなく、皆さんの肌を健やかに保てるお手伝いが出来たらいいな、と」
「なぜそんなピンポイントな夢を?」
男の人が考えるような夢じゃないよな。
「私、子供の頃アトピーだったんです」
「アトピーって皮膚疾患の?」
「はい。あれって本当に体中痒くて掻きたくなるんですけど、掻いたら酷くなるんで絶対掻いちゃ駄目なんですよ。
でも、痒いのを我慢するって子供にしてみると地獄なんですよね」
「あ~、何となくわかる…虫刺されでさえキツいし」
こんな程度のことと比べちゃ失礼なのかも知れないけど、彼はニコッと笑って頷いてくれた。
「でしょ?私はまだ軽い方だったから病院で処方された薬を飲んで塗り薬を塗ってなんとか凌いでましたけど、本当に酷い人はなかなか治らないんですよ」