第33章 シルキー
「はじめてのご来店ですよね?」
その店員が歩いてくると俺の前で立ち止まった。
「あ、えっと…姉に頼まれて買いに来たんですけど…」
「お姉さん?あっ、もしかして大野さん?」
突然名前を言われ驚いた。そんな俺に気が付いたのかその店員さんはまたニコッと笑った。
「お姉さんから連絡いただいてます。弟が買いにいくので用意しておいてくださいって」
「あ、そうだったんだ」
「たぶん弟さんじゃわからないだろうから」
「確かに…」
店の中の商品を見回しても何が何やら全くわからん。
クリームの写真も添付してくれてたけど、探し出せる自信がない。
「すみませ~ん」
「はい、ただいまお伺いいたします」
さっきまで話していた女性たちが声を掛けてきた。
「すみません、ちょっとお待ちくださいね」
俺に向かって微笑むと女性客の元へ戻っていった。
女性たちと笑顔で数回言葉を交わし、商品を持ってレジへ。会計を済ませると俺の所に戻ってきた。
「すみません、お待たせして…お品物ご用意出来てますのでどうぞこちらへ…」
見た感じ俺と同じくらいの年齢だよな?
接客業だからか物腰がすっげぇ上品…俺とは大違い。
それに男の人なのに甘くていい匂いがするし…
今までの俺の人生の中で初めてあったタイプの人。
なんだか近くにいるだけでドキドキする…