第32章 麗しのキミ
「ふ~っ…」
智さんは大きく息を吐いた…
「終わったよ?潤…」
そう言ってこちらを向いた智さんはやたらと艶っぽい表情で微笑んだ。
「あ、うん…」
今まで見たことのない智さんの表情にドキッとする。
いつもと違う智さん…あまりの変わりように言葉を失った。同一人物…なんだよな…
「潤?どうかした?」
俺の元に歩いてきた。
「ちょっと…というか、だいぶ吃驚…」
「吃驚?なんで?」
不思議そうな顔をするんだけど、少し目を細めたその表情さえも色っぽくて…
「いや…いつもと違いすぎて…智さんが妙に色っぽい」
「え?な、なに変なこと言ってんの…」
照れて頬をピンクに染め、視線を俺から逸らした…そんな仕草にも心臓が高鳴る。
「潤?」
黙っている俺を上目使いでチラリと見る。
こんなことしちゃ駄目だってわかってる…わかってはいるけど止められない。なんなんだ?この魔力でも使っているのか?と疑いたくなるような吸引力。
俺はそのピンクに染まった頬に手を添えゆっくりと顔を近付けていった。
そっと触れさせた唇…
「んっ…」
智さんの甘い声…俺は智さんの頬を両手で包み込み離れられないよう唇を押しつけた。
智さんの唇は熱があるんじゃないかと思うくらい熱かった。
ゆっくりと離れると智さんの瞼もゆっくりと開かれる。
「…潤、なんで…」
「ごめん、我慢出来なかった…」
瞳を潤ませ俺を見つめる智さんに心が痛んだ。
「友達からはじめてゆっくり進んで行けばいいかなって思ってた…でも駄目だ…今の智さん見たら押さえられない。
智さん…俺、智さんのことが好きだ」