第32章 麗しのキミ
「いいの?僕なんかで…」
『僕なんかで』なんて言ってるのにその瞳は言葉とは裏腹で、俺を見つめる智さんの目に熱情が宿った。
翔さんが言いたかったのはもしかしてこういうこと?
智さんの中の熱を放出させるためにはその熱を受ける相手が必要…
でも智さんと翔さんはお互いにそういう対象ではなかった。
それで智さんが興味を持った俺に智さんを受け止めろと…
翔さんは俺が智さんに特別な感情を持ったことを知り『大野智』の熱を引き出すのに適任者だと思ったのか…だったら俺は進むのみ。
「僕なんかじゃないよ…智さんだから…智さんが欲しいんだ」
「潤…」
智さんの腕が俺の背中に回り抱きついてきた。
俺も智さんの背中に腕を回し抱きしめる。
俺の腕の中で智さんは顔をあげた。
「潤…」
俺を呼ぶ声とその潤んだ瞳は欲情に染まっていた。
俺は智さんの頬を撫でるように触れ、そっとキスをした。
何度も啄むようにキスを繰り返すと智さんの手が俺の後頭部に回り唇を押し付けてきた。
「じゅ…」
唇を押し付けながら名を呼び俺を誘う。
薄く開かれた唇は獲物を捕らえるための罠…俺はその罠に自ら飛び込んだ。
智さんの咥内に舌を差し入れるとすぐに絡め取られた。
「んんっ…ふっ、うぅ…んっ…」
夢中で貪りついてくるその熱烈なキスに頭がくらくらしてくる。
なんてキスするんだこの人…
智さんの肩を掴み身体を離した。
「さ、としさん…ちょ、まって…」
「まだ足りない、潤…もっと…」
唇を濡らし俺の首に巻き付けるように腕を回す智さん…俺の中で何かが弾け飛んだ。