第5章 rival
「…なまえ…」
俯いたまま小さな声で呟くから何を言ったのか聞き取れない。
「え?なに?」
櫻井は顔をあげ、真っ赤な顔をして意を決したように言った。
「大野さんの事、名前で呼んでもいいですか?」
「…へっ?」
突然の申し出に、間抜けな返事をしてしまった。
「あ、駄目ならいいんです…ただ雅紀が二宮さんの事名前で呼んでるの見て、羨ましいなって思っただけなんで…」
再び俯いてしまった櫻井…
いや、駄目な訳ないだろ。寧ろ嬉しすぎるお願いなんだけど…
でも、そんなことされたら、間違いなく俺の顔弛むよな?
そうは思っても、恋する男の欲望には敵わない
「…いいよ」
櫻井は勢いよく顔をあげた
「いいんですか?」
満面の笑みを見せられて、俺の心臓が大きくドクンとなった。
あ~俺、櫻井と一緒にいると早死にするかも…
「そんなことくらい、いくらでもどうぞ」
なんて、なんとも無い振りしてるけど、もういつ心臓止まってもおかしくないな…
「あの、じゃあ……智さん…」
頬をピンクに染めたまま、恥ずかしそうに俺の名前を呼ぶ…
あ、俺の心臓今一瞬止まったわ…
「…あの、智さん?」
「あ、なに?」
「お茶、冷めちゃうからいただいていいですか?」
「勿論!ごめん、冷めちゃったかな?」
櫻井がカップに口を付けて一口飲む
「いいえ大丈夫です、とっても美味しい…」
「さっきのコーヒーには全然及ばないけどな」
「そんなこと無いです…智さんが入れてくれただけですっごく美味しいです」
そう言って微笑む櫻井…こいつを抱きしめなかった俺を誰か誉めてくれ…
その後は俺の理性をフル活動させ、手を出すことなく、櫻井は無事帰路についた…
あ~マジで疲れた…