第32章 麗しのキミ
翔さんに連れていかれたのは日本食の店。
今まで何度も飲みに行ってるけど和食は珍しいな。
「今日は和食なんだ…年配の方?」
店に入り予約した部屋へ歩いてく。
「ははっ、年配ではないよ、俺と同い年…中身はおじいちゃんかもしれないけどな」
「中身は?」
「ちょっと浮世離れしてるから、仙人ぽい?」
「へ~、そんな人と交友あるんだ」
どちらかというと派手な付き合いが多い翔さんにそんな友人がいるのは意外だったな。
「幼馴染みなんだよ…実家がすぐ隣で双子のように育ったから」
「え?翔さんにそんな人いたの?今まで聞いたことない」
「ん?まぁ言わないようにしてたし…」
「なんで?」
「色々とな…問題があるんだよ。あ、この部屋だ…」
翔さんが襖を開けると既に相手の人は座っていた。
「ごめん、待たせた?」
翔さんが靴を脱ぎながら話しかけるとその人はふにゃっと笑った。
「ううん、僕もちょっと前に来たばかりだよ」
「ええっ!」
「こんばんは、松本さん」
「え、あ、こんばんは…ってなんで、あなたが…」
もう2度と会うことがないと諦めかけていた彼が目の前に座っている。
夢じゃないよな?
「ふふっ、名刺もらった時にすぐに翔ちゃんの所の編集者さんなんだってわかったんだけどね、ちょっと確認したいことがあったからすぐに言わなかったの」
「確認したいこと?」
「うん、とりあえずあがったら?」
驚きすぎて動きが止まってしまっていた俺。慌てて靴を脱ぎ座敷にあがった。
翔さんが彼の隣に座ったから俺は向かい側の席についた。