第31章 future of hope
教会の中で待っているとパイプオルガンの曲が流れ出した。
智と翔ちゃんが腕を組んでゆっくりと歩いてくる。
前を向き堂々と歩く智の姿はとても頼もしく見え、隣で瞳を潤ませながら歩く翔ちゃんはとても輝いて見えた。
神父様の前で誓いの言葉を述べるふたりは一切の迷いが無かった。
指輪を交換して誓いのキスをするととうとう翔ちゃんの瞳からは涙が溢れ、そしてそれを拭う智の瞳からは翔ちゃんへの愛情が溢れていた。
式が終わると教会の外に出て記念撮影。
「おめでと、翔ちゃん」
改めて翔ちゃんにお祝いの気持ちを伝えると翔ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。二宮さんと雅紀に参列して貰えるなんて思わなかったから凄く嬉しいです」
「でも俺、ここに来るまで知らなかったんだよ?ふたりが式挙げるの」
「え?そうなんですか?雅紀、言ってなかったの?」
「うん、カズさん驚かせたくて」
「そうだったんだ…すみません、急に」
「あぁ、いいんだよ?元々出掛けるのは聞いてたし、それに幸せそうな翔ちゃん見れて俺も嬉しい」
そう言って抱きついたら智が翔ちゃんの腕を引っ張った。
「ニノ、人の嫁に抱きつくな」
「え~ケチ~」
「「ほんと~」」
雅紀と松岡さんの声が被った。
「お前らなぁ…」
苦笑する智と幸せ顔の翔ちゃん…ふたりのこの関係はずっと変わらないんだろうね。
「二宮さん」
「ん?なに?」
「これ…」
翔ちゃんが俺に差し出したのは今まで持っていた生花で作られたブーケ。
「明日お誕生日ですよね?一日早いけどプレゼントです」
「翔ちゃん…」
花嫁のブーケを貰う意味わかってる?
これって『次幸せを掴むのはあなたですよ』ってことだよ?
手を動かせずにいた。すると翔ちゃんはそんな俺の手を取りブーケを握らせた。
「二宮さん、色々ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします」
うっすらと涙を浮かべてお礼を言う翔ちゃんが愛しい。
「翔ちゃん…智なんか止めて俺のとこに嫁においで~」
翔ちゃんを抱きしめると後ろから引き離された。
「カズさん、さすがにそれはダメ…」
苦笑する雅紀がいた。