第31章 future of hope
マンションを出るとタクシーを捕まえ乗り込んだ。
てっきり電車で移動するのかと思っていたけど違うんだ。
「電車じゃないんだね?」
「せっかく綺麗にセットしたのに満員電車で乱れたら勿体ないでしょ?」
「そんな理由?」
「俺としては十分な理由だけど?」
ニコッと笑う雅紀がなんだか男らしく見えてちょっと照れる。
20分程経ちタクシーが止まった場所は…
「教会?」
「そう…ほらこっち」
雅紀に手を引かれ教会の隣の建物に入って行った。
建物奥の部屋の前に立ち止まりドアをノックする雅紀。
「え?大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫」
ドアが開き中から顔を覗かせたのは
「智?」
「おう、ふたりともよく来てくれたな…サンキュ」
「え?どういうこと?」
それに智のその格好…
「とにかく中に入れよ」
「お邪魔します」
雅紀について中に入ると中には純白のドレスを着た花嫁…
「翔ちゃんっ⁉」
ニコッと笑う花嫁は正真正銘翔ちゃんだ。
「こんにちは二宮さん、雅紀も来てくれてありがと」
「翔ちゃんの嫁入りなんだから見届けるのは当然でしょ?」
嫁入り?智も嫁に貰うって言ってたけどまさか…
「結婚式?」
「そ、今日は大野さんと翔ちゃんの結婚式」
「って言っても参列者はお前たちともうひとりだけなんだけどな」
照れたように笑う智とその隣で幸せそうな微笑みを見せる翔ちゃん。
「明日引っ越しだろ?だからその前に何か出来ないかなって思ってて、知り合いに相談したらこの教会紹介してくれたんだ」
「こんな大掛かりなことじゃなくてふたりだけで教会に来るだけで良かったんですけど、ここを紹介してくれた人がそれじゃ許さないって」
許さないって、どんな関係?