第31章 future of hope
マンションまで無言で帰ってきた。
雅紀が玄関を開けふたりで中に入る。
雅紀は靴を脱ぎリビングへ向かっていくけど、俺は靴を脱いだまま動けなかった。
このあと雅紀からどんな話がされるのか…
智は雅紀が俺を嫌う筈がないって言うけど、その言葉を信じてもいいの?
ここまで何も言わずにいる雅紀に段々不安な気持ちが募ってくる。
俺が動かないことに気がついた雅紀が俺の元に戻ってきた。
俺の前に立つと少し苦笑いをする。
「そんな不安そうな顔しないでよ…」
俺の頬に雅紀の手がそっと添えられた。
「お仕置きなんてしないから大丈夫だよ?」
お仕置きなんてどうでもいい…別れ話をされるくらいならお仕置きされた方がずっとマシだよ…
雅紀のことを見上げると優しく微笑んでくれた。
「ほら、部屋に入ろ?ここでする話でもないでしょ?」
雅紀の手が俺の手をとり歩き出す。俺は大人しくついていった。
雅紀がリビングのソファーに座ると引っ張られるように隣に座わらされた。
どこを見ていいのかわからず、繋がれたままのふたりの手を見つめた。
この手がずっと離れなければいいのに…
「カズさん…ごめんね」
いきなり謝る雅紀…やっぱり俺、振られるのかな…
俯いた俺の頭を雅紀の腕が包み込む…腕に力が込められ俺は雅紀の胸の中に抱き寄せられた。
細いのに逞しい胸…俺が心から安心できる唯一の場所。
世界で一番好きな場所…