第31章 future of hope
会社に戻り暫くすると雅紀も戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「お疲れ…」
笑顔で挨拶する雅紀に対し、視線も合わせず素っ気なく返事を返した。
俺ってこんなビビリだったっけ…さっきの女性と雅紀の関係が定かじゃないのに、別れを告げられるんじゃないかと思うと怖くて雅紀の顔を見ることも出来ない。
会社でそんな話をする筈ないのに…
「カズさん?何かありました?」
隣のデスクに座る雅紀の心配そうな声が聞こえる。
気配でこっちを見てるのがわかるけど、雅紀の方を向かずに日報を書いていた。
「何もないよ…」
暫く無言で雅紀が俺をじっと見てるのはわかったけど俺はそれを無視して仕事を続けた。
「…そうですか…」
俺がちらりとも雅紀の方を向かなかったせいか雅紀も前を向き自分の仕事を始めた。
俺は速攻で仕事を終わらせデスクから立ち上がった。
「お先…」
その言葉に流石に雅紀も驚いたみたで勢いよく俺を見上げた。
「えっ?カズさん?ちょっと待ってて、俺まだ…」
俺は雅紀の静止を聞かずそのままフロアを後にした。
「ニノ?」
声を掛けられ顔を上げると智が前から歩いて来た。
「どうした?お前…顔が死んでるぞ?」
心配そうな表情で俺を見る智…智にこんな風に心配されるの初めてかも…
自分で言うのもなんだけど、そこそこなんでもこなせる俺…大きな失敗とかもしたことないから落ち込んだこともない。どちらかと言えばポーカーフェイスだし。
人に心配されるほど落ち込むの人生初だよ…
俺…こんなに雅紀のこと好きになってたんだなぁ。
「ニノっ⁉」
智の驚く声が耳元で聞こえた。
そりゃそうだよな…智にしがみついて泣くなんて、俺自身が一番驚いてるよ。