第31章 future of hope
金曜日、営業を終え会社に戻る途中、車道の向こう側に雅紀の姿を見つけた。
少し前を歩く雅紀、こちらには気がついてないな。信号を渡って後ろから脅かしてやろうと小走りで後を追った。
もう少しで追い付くかと思った時に雅紀は突然喫茶店に入ってしまった。
こんな時間に?もう会社に戻るだけのはず、喉が渇いたとしてもわざわざ喫茶店に入る時間でもないだろ。
そう思って窓の外からそっと中の様子を伺うと雅紀の座った席には女性の姿…誰だ?見たことない子だな。
年齢的には俺たちと同じくらいみたいだけど…
笑顔で話しているふたりを見て胸の辺りがジリジリしはじめた。
なんだよ、そんな嬉しそうな顔して。誰にでもイイ顔してんじゃねぇっつぅの。
女の子が隣の椅子に置いてあった小さな紙袋をテーブルの上に置くと雅紀の顔が更に嬉しそうな笑顔になった。
なに?まさかプレゼント貰ってた喜んでんじゃないよな?受け取らないだろ?そんなモノ。
なのに雅紀は袋の中から箱を取り出し中身を確認するとその子に笑顔を見せたんだ。相手の女の子もその笑顔を見てホッとした表情を見せた。
勿論声は聞こえない…でも今の口の動きは間違いなく『ありがとう』と『よかったぁ』だ。
俺以外の人間からプレゼント貰って喜ぶってどういうこと?
やっぱり女の子の方が良くなった?フワフワしてて俺よりも全然可愛いもんね…
気がつくと店の前を離れ会社に向かって歩き出していた…
あ~ぁ、なんで誕生日前にあんなの見ちゃったんだろ…明日のホテル、キャンセルして貰った方がいいのかな…それとも最後に楽しく過ごして後腐れなく別れた方がいい?
……後腐れなく別れるなんて…出来るのかな俺。