第30章 年下のオトコノコ♪
「あのさ、敬語やめない?」
他人行儀って、いうか、他人なんだけどなんか距離がある感じで寂しい。
「でも、櫻井さん年上の方だし」
「それがヤなの、おじさん扱いされてるみたいで」
「おじさんだなんて全然思ってません」
「だったらやめよ?それから櫻井さんもヤだな」
「え、でもなんて呼べば…」
「名前がいいな」
「翔さん?」
「『さん』も年上っぽい」
「じゃあ翔くん?翔ちゃん?」
小首を傾げて翔ちゃんって呼ばれた時に心臓がきゅんってなった。
「翔ちゃんがいい」
そう言うと智くんが驚いた顔をした。
「え?マジで?俺冗談のつもりだったんだけど」
「え?そうなの?でも翔ちゃんがいいな」
「櫻井さんがいいなら…」
「櫻井さんじゃないでしょ?」
「あっ…翔ちゃんがいいなら」
「うんうん、それがいい」
それからお互いの年齢や趣味なんかの話をして気がつけば8時になろうとしていた。
「あ、もうこんな時間。ごめん、智くん。お家の人心配しちゃうね」
「大丈夫。家共働きで夕飯いつも8時過ぎだから」
「そっか、でもここからどれくらいかかるの?」
「10分くらい」
「じゃあ急いだ方がいいね」
駅の構内から出た。
「どっち方面?」
「こっち」
智くんが指差す方は俺のアパートと同じ方向。
「俺もこっちだよ」
「知ってる」
「え、なんで?」
「翔ちゃんのこと近くのコンビニで何度か見かけたことあるから」
「えっ!あのコンビニ近いの?俺のアパート相当近いけど」
「家も近いよ?1分掛からないんじゃないかな?」
「家より近いわ…家は3分くらいは掛かるかな」
「そんな近くなの?今度遊び行っていい?」
「いいよ、おいでよ。あ、今度こそ連絡先教えるわ」
俺がスマホを取り出すと智くんもスマホを取り出し、無事連絡先を交換した。