第30章 年下のオトコノコ♪
「あの…」
「ん、なに?」
改札口を通りホームへ向かう。
「お名前と連絡先教えてもらえますか?」
「え?なんで?」
「お金返さないと…」
「あ~いいよ、400円くらい」
「でも…」
困った顔を見せるから可哀想になった。そんな顔させたくないのに。
「櫻井」
「え?」
「俺の名前…櫻井翔だよ」
「あ、櫻井さん…」
「君の名前は?」
「大野です。大野智」
「智くんか…」
俺がそう呼ぶと少し目を見開いた後、ふふっと笑った智くん。
「なに?」
「あ、ごめんなさい…櫻井さんのイントネーションか可笑しくて。そんな呼ばれ方したの初めて」
「え?そう?智くん?智くん?智くん?」
色々とイントネーションを変えて聞かせてみた。
「ははっ全部可笑しいですよ」
「そうか…なんかごめん」
「いいえ、気にしないでください。櫻井さんの『智くん』好きです」
ニコッと微笑みながら俺のことを見上げる智くんに、なぜか俺の心臓はぎゅっと締め付けられた。
「櫻井さん?」
いつの間にか立ち止まってしまっていた俺に不思議そうな表情をする智くん。
「あ、ごめん…」
「ふふっ、さっきから謝ってばかりですね。櫻井さんって面白い」
ふにゃっと笑ったその顔に今度はドキドキが止まらない。
俺、どうしちまったんだ?