第30章 年下のオトコノコ♪
何となく離れがたくて切符売り場に行く彼を見続けた。
販売機の前で切符を購入せずにUターンした彼。
「どうしたの?」
俯きながら歩く彼に声を掛けた。
ビクッとした彼…まだ俺がいたことに驚いたのか、俺を凝視した。
「あ、財布にお金入ってなくて…昨日買い物して全部使ったの忘れてた」
「いくら?」
「え?」
「電車賃、いくらなの?」
「200円です」
俺は財布から500円玉を出し、手のひらにのせ彼に差し出した。
「はい」
「えっ?」
「これで切符買いな?帰りの分も買えるでしょ」
「え、でも…」
「家に帰ってたら遅刻しちゃうでしょ?」
黙りこむ彼の手を掴み手のひらに500円を置いた。
「早く買っておいで」
微笑んでみせると彼はコクンと頷いた。
「ありがとうございます」
踵を返し走って販売機に向かう彼。
今度は切符を手にし戻ってきた。
「はい、これお釣りです」
100円玉を見せる彼。
「いいよ、ジュースでも買って飲みなよ、って100円じゃ足りないか」
「いえ、学校の自販機なら買えますけど、そんなことまでして貰うわけにはいきません」
そりゃそうか、切符代出してもらってるのにジュースまでって…
「わかった」
俺が手のひらを見せるとニコッと笑いその上に100円玉をのせた。
「ありがとうございました、助かりました」
「いやいや、困ってるときはお互い様ってね」
ふたり並んで改札口へ向かう。