第29章 可愛いアナタ
「ちなみにね、俺、男性も女性も愛せる人間なんですけど、ただ男性と付き合うときは女性的立場が好きなんです。だからどちらにしても課長とは付き合えませんね。
俺、格好いい課長に抱かれたかったので」
「あ、そうなんだ…」
「はい。だからもう課長のことはキッパリ諦めます。でも、その変わり相葉さんのこと狙おうかなぁ…」
「ダメぇ!雅紀は俺のなの!」
菊池がニヤッと笑ったのとほぼ同時に今までおとなしくしてた翔ちゃんが急に大声をあげた。
そして俺の身体に腕を回ししっかりと俺に抱きついた。
吃驚した俺をよそに菊池は楽しそうに笑いだした。
「ははっ!ほんとに可愛いですね、課長。会社の奴らに話しても信じてもらえないんだろうな」
「お前、まさか…」
「安心してください、さっきも言ったでしょ?ここで見聞きしたことは誰にも言いません。
例え家では可愛い課長でも会社での仕事っぷりは間違いなく課長の実力なんですから、そこはやはり尊敬してます。
課長を貶めるような事はしませんよ」
「ありがとう」
「お礼を言うのはこちらですよ。こんな貴重な課長の姿見せて貰ったんですから」
「もう誰にも見せないけどな」
「あれ?意外…相葉さんって独占力強い?」
「なのかな?今まで翔ちゃんの可愛い姿を見られるのは俺だけの特権って思ってたからさ。誰かに見られるのは正直もう勘弁だね」
「すみません、見せていただいちゃって」
「いや、お陰で翔ちゃんの気持ちがわかったからいいよ」
「課長の気持ち?」
「騙してごめん、俺と翔ちゃん付き合ってないんだ…」
「はあっ⁉」
菊池は目を見開いて驚いた。