第29章 可愛いアナタ
「課長と相葉さんって俺が想像していたのと逆でした」
逆…?
「逆って何が?」
「受けと攻めが…」
「へっ⁉」
「だから想像つかなかったんです、おふたりが愛し合ってる姿」
笑みを浮かべて話す菊池。
「どういう事?」
「だからぁ、俺課長が攻める方だと思ってたんですよ。ここに来た時も相葉さんを『雅紀』って呼んでるし、課長を『翔ちゃん』なんて呼んでるでしょ?しかもご飯作るのは相葉さんの仕事だって言うからテッキリ相葉さんが女性的な方なんだと」
「え、だって呼び方は子供の頃からだし、料理は翔ちゃん不器用で出来ないから俺がやってるだけだよ?」
どちらが男性的とか女性的とか全く意識したことなんてない。
「なんだそうだったんですか。
会社でのおふたりの関係見てたから…先入観ですね。
だからやたらと可愛い課長を見て『あれ?演技してるのかな?』って思ったんですけど、先程のキスを見て完全に俺の勘違いだったんだなと」
少し苦笑いする菊池。
「あれでわかるの?」
「わかりますよ~。いつもしてることなんですから自然と攻める側がわかります」
「で、俺が攻める側だと納得するの?」
菊池はふふっと笑った。
「はい。だって今の課長超可愛いんですもん。こんな姿会社じゃ見たことないからわからなかったですよ、課長が受けなんて」
そっか、可愛い翔ちゃんを知らないからイメージが出来なかったのか。
可愛い俺なんてもっと想像つかないだろうしな。