第29章 可愛いアナタ

そんなことを思っていたら翔ちゃんが俺の頬を両手で包み込んだ。
徐々に近付いてくる翔ちゃんが瞼を閉じ俺の唇に自分の唇を押し付けてきた。

初めて触れた翔ちゃんの唇はふっくらと柔らかい。

僅か数秒触れただけで唇はすぐに離れていった…

至近距離で俺のことを見つめる翔ちゃん…その潤んだ瞳は演技なの？頬をピンクに染めうっとりした表情をする。俺の頬に添えられた手は僅かに震えていた。

「雅紀、大好き…」

そう言って目を伏せ、また俺の唇にしっとりと唇を押し付ける。
これって演技じゃないよね？演技でこんなこと出来る人じゃない。

さっきよりも長い時間触れたままの唇。
俺は翔ちゃんの後頭部に手を回し動けないように押さえ込んだ。

「んっ…」

僅かに漏れた翔ちゃんの艶を含んだ声…薄く開かれた唇に舌を捩じ込んだ。
ビクッと震える翔ちゃんを無視し翔ちゃんの舌を絡め捕った。

「ふっ…ん…」

翔ちゃんの甘い吐息に煽られ俺は更に激しく翔ちゃんにキスを続けた。

菊池に見られてることなんてもうどうでもよくて、大好きな翔ちゃんとのキスに酔しれた。

「んんっ…」

翔ちゃんの苦しそうな声と俺の胸の辺りのシャツをキツく握りしめる翔ちゃんの手に気が付きゆっくりと翔ちゃんを解放した。

「ま、さき…」

トロンとした瞳で俺を見上げる翔ちゃんは半端なく色っぽい。俺とのキスで蕩けてくれた？

「あの～…」

見つめあってる俺たちに菊池が遠慮気味に声を掛けてきた。

「あっ！わりぃっ！」

凭れかかってきた翔ちゃんを胸に抱き留めすっかり存在を忘れていた菊池に謝った。

「もうわかったからいいです」

「わかったって何が？」

「すみません、俺勘違いしてました」

勘違い？何か勘違いさせるようなことした？