第29章 可愛いアナタ
「それでね…雅紀にお願いがあるんだけど…」
翔ちゃんが困惑した表情で俺を見上げる。
「なに?」
「…俺の恋人の振りしてくれない?」
「………はあっ⁉なんでっ?」
「だって雅紀が言ったんじゃん、誰か想像して話せって…だから一番よく知る雅紀の事を想像して話したの…そしたらさ、菊池が『それって相葉さんの事ですよね』って言うから『うん』って答えちゃった」
「で?それで菊池は俺と翔ちゃんが付き合ってるって信じたの?」
「ううん、信じてない…『だったら相葉さんにも話を聞かせて貰う』って。
だから、菊池に何か聞かれたら俺と付き合ってるってことにして?」
そんなおねだりするような可愛い顔で頼まれたら断れないでしょ?ってか、誰か他のヤツにこの役やらせるくらいなら喜んで引き受けるけどさ。
翔ちゃんの事なら誰よりも詳しいんだから。菊池になに聞かれたって答えてやるさ。
「わかったよ、翔ちゃん。菊池の前では今から俺と翔ちゃんは恋人同志ね」
「ありがとう、雅紀!」
翔ちゃんは嬉しそうに笑顔を浮かべると俺の首に腕を巻き付け抱きついてきた。
「安心して?翔ちゃんのことは俺が守ってあげるから」
俺が翔ちゃんの背中をポンポンと叩いてあげると翔ちゃんはぎゅっと抱きつき直し俺の肩の上で頷いた。
「うん…ありがと…雅紀、大好き」
聞き慣れた『大好き』もこんな抱きつかれた情況で聞くとドキッとするな。