第29章 可愛いアナタ
「じゃあさ、恋人が出来たってことにしちゃえば?」
「でもあれこれ聞かれたらすぐにバレるよ…」
確かになぁ…どうせ振る為の口実とかって疑われるよなぁ。
実際にいる人物を恋人に仕立てあげて話すとか?
だったら話に信憑性がでる?
「誰かさ、想像して話してみれば?」
「想像?」
「うん…実際いる人物を頭の中で恋人にしちゃうの。そうすれば想像して話しやすくない?」
「そっか…なるほどね。うん、次言われたらやってみる」
「頑張って!」
「ありがと、雅紀」
なんて言ってはみたものの、やはりアイツはそんなに簡単にはいかなかったみたいだ。
翔ちゃんと対策を練ってから2日しか経ってないのにまた翔ちゃんを呼び出したらしい。
「雅紀ぃ、どうしよう~。菊池、信じてくれなかったぁ」
涙目になりながら俺に結果を報告する翔ちゃん。
「なんて言われたの?」
「どうせ嘘でしょ?って…そんなことあるわけないって」
そんなことあるわけない?一体どんな話をしたんだ?
「何を信じてもらえなかったの?」
「…ずっと好きな人がいて、その人と付き合うことになったって」
「なんでそれを信じてもらえなかったの?」
「今まで付き合ってなかったのに急に付き合うことになったなんておかしいって…課長だったらいくらでもチャンスあったでしょ?って言われて、そんなことないって言ったんだけど、信じてくれなくて…」
まぁねぇ…会社での翔ちゃん見たら恋人の一人や二人すぐに作れそうだもんなぁ。
でも実際の翔ちゃんは交際を断るためにこんなに悩んじゃうほどピュアなんだけど。