第29章 可愛いアナタ
プリンのスプーンを口にくわえたまま翔ちゃんが上目使いで俺を見る。
「ねぇ雅紀…」
ちょっとヤバイぞその表情…心臓がキュンってなっちゃったじゃん。
悟られないようにする為にあえて気のない返事をする。
「ん~なに~?」
「俺ね、何かぁ最近やたらとコクられんの。何でだろ~?」
あぁ、風間が言ってたやつかぁ…翔ちゃんの『可愛い顔』見たさに流行ってるって。でもそれを翔ちゃんに言っていいものかどうか…
「翔ちゃん格好いいからモテるんだよ」
「えっ!俺って格好いいの?」
目を見開いて驚き顔の翔ちゃん…自覚無かったんだ。
「うん、格好いいよ?見た目もだけど、仕事も出来るから頼りになるし、女の子たちは彼女になりたいんでしょ?」
「…そっか…俺ってカッコよかったんだ…でもさぁ~」
少し俯き加減でプリンの容器にスプーンを挿しクルクルと回す翔ちゃんは何か言いづらそうな…
「他にも何かあるの?」
「ん~、女の子だけじゃ無いんだよねぇ…」
はっ⁉女の子だけじゃない?それって野郎も、ってことだよね?まさか…
「…菊池?」
そう言った瞬間翔ちゃんが勢い良く顔をあげた。
「何で知ってるの⁉」
やっぱりアイツか…本気で狙ってたんだ。
「風間がね、そんな事言ってたから」
「そうなんだ…」
「で?菊池になんて言ったの?まさかオッケーした訳じゃないでしょ?」
「勿論断ったよ!でもさ、アイツ諦めないからって…他の女の子たちは『ゴメンね』って言うと笑顔で『いえ、わかってましたから』なんて言ってくれたのにさ。
雅紀…俺、どうすればいいんだろ…菊池は可愛い部下だから傷つけたくないんだよなぁ」