第28章 forever
《智side》
営業先から会社に戻る途中で翔に会った。こんな所で会えるなんてラッキーだな、って言ったら嬉しそうに笑う翔。
可愛いんだけどね、あまり外でその表情をしてほしくないと思ってしまう俺はほんとに独占力が強い男だよなぁ、とつくづく思う。
「あ…」
翔が上を見て小さな声をあげた。
「ん?どうした?」
「桜の蕾が開いてきてる…もうすぐ咲きますね」
「ほんとだ」
桜の木を見上げて嬉しそうに微笑む翔。
「嬉しそうだな?翔」
そう言うと俺の顔を見てニコッと笑った。
「もちろん嬉しいですよ?思い出の花ですから」
「へ~、聞いてみたいなその話、いい思い出なの?」
翔の思い出の花でもあるけど俺にとっても思い出の花。わかってはいるけどからかい混じりでそう聞くと
「はい、と~っても素敵な思い出です」
頬をうっすらとピンクに染め、幸せそうな微笑みを見せた。
あ~そうきたか…余計なこと聞かなきゃよかった。今すぐに抱きしめたくなったじゃねぇか。
まぁいいや今日は週末、家に帰ったら思う存分抱いてやろ。
あれから17年、今年ももうすぐ桜が咲く、そしたら…
「なぁ翔、桜が咲いたらさ…」
「翔っ!」
「え?」
「は⁉」
聞いたことのない声と共に凄い勢いで翔の体に抱きつく人影。
なんだ⁉『翔』って名前を呼んだってことは知り合いか?
「あ、潤…」
俺の背後から聞いたことのある声がして振り返ると少し離れた所に相葉が立っていた。
「え?潤?」
翔がそう言うと抱きついていたそいつが翔の両肩を掴み少し体を離した。
物凄く濃い顔したイケメンが笑顔で翔を見つめる。
「ただいま!翔」
誰だよ⁉『潤』って!