第4章 我輩は犬である
食事を終えると、翔と一緒に風呂に入る。
一緒と言っても、浴槽に浸かる訳ではない。シャワーで体を洗って貰うだけだ。
翔に体を洗われると、とても気持ちがいい。
体をブルッと振るわせ、体についた水を翔まで飛ばした。
始めの頃は、洋服を着たままで俺のことを洗ってくれてたんだけど
毎回これのせいで翔が濡れるから、いつからか服を脱いで洗ってくれるようになった。
翔の肌は真っ白で綺麗だ…初めてみた時、思わず舐めてしまったら『お前のせいで濡れたから拭いてくれてるの?』なんて勘違いをしてくれた。
だからそれからは、毎晩水を飛ばしては翔の体を舐めている。
「ありがと、さとし。もう大丈夫だから外で待っててね」
バスルームから出されてしまった。
もっと舐めていたかったのに、残念…
お風呂から出ると今度はドライヤーで体を乾かしてくれる。
全身を撫でてくれる手が気持ちよくて、そのまま寝てしまいそうになる…が、ここで寝るわけにはいかない。
まだまだ翔と一緒にいたいんだ。
この後の過ごし方は日によって違くて
仕事をする日もあれば、本を読む日もあったり。のんびりとテレビを観るだけの日もある。
ただ、俺のいる位置は決まって翔の膝の上。
時折体を撫でてくれたりして、俺にとっては至福の時間だ。
「さて、そろそろ寝ようか」
そう言って、俺を抱えたままベッドに向かった。
翔と一緒に寝られるのはいいが、正直俺はこの時間があまり好きではない…
なぜなら……翔が泣くから…
毎日ではないけど、寝ながら翔は涙を溢す。
寝ているから理由がわからない…でも『さと…』って言いながら涙を流すんだ…
俺はその涙を舐めて拭いてやるしか出来なくて、それでも翔の顔にうっすら笑みが浮かぶから、ちょっと安心する。