第4章 我輩は犬である
我輩は犬である。名前はさとし。
約1年前からこの家の住人(?)になった。
それ以前の記憶はなく、なぜここで飼われることになったのかも分からない。
わかっているのは、俺のご主人様がとっても優しくて可愛い人で
そんな人に飼われてる俺は幸せ者だということと
独り暮らしなのに、何となく他の人の存在を感じさせる物が、部屋の中のあちこちにみられる…
なのに、その持ち主は姿を現さないこと。
ご主人様の足音が聞こえ、出迎えるために玄関の前で待つ。
扉が開くと、ご主人様が俺に笑顔を向けてくれた。
この綺麗な笑顔を見せてくれるのが、俺のご主人様の翔…俺の大切な人。
「ただいま、さとし。いい子にしてた?」
そう言って、翔は頭を撫でてくれる。
「ワンッ!」
俺はしっぽを振って答えた。
「お腹すいたでしょ?すぐご飯にするからね」
翔は毎晩8時位に帰ってくる。
自分もお腹をすかせてるだろうに、必ず俺のご飯を先に用意してくれるんだ。
それともうひとつ、毎日同じことがある。
翔の匂いが朝と夜で違うってこと。
朝は爽やかな香りを纏って行くのに、帰ってくると鼻にツンとくる匂いをさせてる。
よく知っている匂いのような気もするんだけど、何の匂いか分からない。
「さとし、おいで…」
翔に呼ばれ、ソファの下に座った。
「はい、ご飯だよ」
でも俺は、翔のご飯が用意できるまで食べないで待ってるんだ。どうせ食べるなら翔と一緒に食べたいから。
翔が自分の分の食事を運んできた。
「ふふっ、さとし。今日も食べないで待っててくれてるんだ。
優しいね…それじゃ、食べようか」
「ワンッ!」