第3章 second love
イルカのショーが終わり水槽のある方へ戻ると翔ちゃんと大野さんに再会した。
そのふたりの距離がいつもに増して近いような…
それにふたりの雰囲気もさっきまでと違う?
「どこ行ってたの?」
翔ちゃんが聞いてきた。
「イルカのショー見てきた。超面白かったよ」
潤くんが笑顔で答えた。
「えー、俺たちも行けば良かった?」
翔ちゃんが微笑んで大野さんを見たけど、少し俯く大野さんの頬が紅く見えた。
「そう?おふたりさんは行かなくて良かったんじゃないの?」
潤くん?
「智さん、ちゃんと伝えられたんでしょ?」
「え?なに?お前知ってたの?」
「知ってたよ、って言うか智さんに相談された」
「なんて?」
「『翔くんがいつまでも返事聞いてくれないんだけど、どうすればいいのかな?』って」
「え、あ、ごめん。俺から聞いた方が良かったの?
智くんに嫌な思いさせたくないから待ってたんだけど」
「それにしても待ちすぎだよ…告ってから2年でしょ?智さんだって不安になるって…」
「ごめんね、智くん」
翔ちゃんの大野さんを見る目がいつになく優しい…
大野さんも翔ちゃんを見詰めて首を横に振る。
「ううん、俺があの時すぐに返事してれば良かったんだよ…待たせてごめんね」
「まぁ、とにかく良かったよ、智さんがちゃんと言えて…
昨日電話で話したときは緊張してて大丈夫かなと思ったけど」
「あぁ、それで朝『眠れなかった』って?」
「そう言うこと…
では、ここからふたてに別れますか…」
「いいよ、このままで」
「遠慮しないでよ、ふたりきりになりたいでしょ?
俺と和は電車で帰るから大丈夫だよ、な、和?」
「うん、そうして翔ちゃん。折角の初デートなんだからふたりで楽しんでよ」
俺は強がりじゃなく心の底からそう思った。