第21章 What is your dream ? #4
智くんが靴を履き替え岡田くんの待つフロアーの真ん中に歩いていくと音楽が掛かった。
先に動いたのは岡田くん…智くんを挑発するように踊ると周りの人たちから歓声が上がる。岡田くんが踊りを止め一歩引くと今度は智くんが踊り出した。
いつもとちょっと違うダンス…挑発を受け、岡田くんに挑むように視線を送り踊る智くんはとても雄々しかった。
岡田くんと交互に踊る智くんからは次第に笑みが溢れ始め、踊ることを心から楽しんでいるようだった。
初めて智くんの踊りを観たときも心惹かれたけど、今日の智くんはそれの比じゃない…
大歓声が響き渡りその声でハッと我に返った。既に音楽は終わってて、智くんがこちらに向かって歩いてきてる。
智くんが俺の前に立つと心配そうな顔をしていた。
「翔くん、どうした?」
「なにが?」
「え?『なにが?』って…翔くん泣いてるよ?」
「へ?」
手を頬に当てると確かに濡れていた。
「あれ?なんで?」
「勝敗聞くまでもないね」
智くんの後ろから歩いてきた岡田くんが苦笑いしてる。
「なんでだよ?」
「だって、大野のダンス観て泣いたんだろ?さっき俺が踊ったときは泣いてなかったもん」
「え?そうなの⁉」
智くんが驚いたように俺のことを見た。
「わかんない…けど、智くんの踊ってるところ観てたら胸が苦しくなった…」
「だってさ、お前のダンスが櫻井くんの心を動かしたってことだろ?ってことで、大野の勝ちだよ」
「そんなことねぇだろ?やっぱりお前にはまだまだ追い付かねぇよ」
「はぁ、わかってないねぇ…俺がお前と争いたかったのは技術じゃないから」
「は?じゃあどうやって勝ち負け決めるつもりだったんだよ?」
「だぁかぁらぁ、今答えが出ただろ?人を惹き付けるダンスが踊れるかどうかだよ…しかもターゲットはたったひとりな?」
「あっ!」
智くんが何かに気付いたように声をあげた。
「わかったか?」
「ん、わかった…」
「まぁ、精々頑張るんだな」
優しく微笑む岡田くんに智くんも笑い返した。
「おぅ、サンキュ」