第18章 What is your dream ? #1
スポーツをやるには体が大きい方が有利だということが身に染みてわかった。
高校に入って背が伸びる可能性も無くはない。
でも筋トレを積んでも野球部の皆のようには筋肉が付かない…たぶん体質なんだ。
僕は夢を諦め野球と離れるために野球部が弱小の進学校に進むことを決めた。
「え?カズ、その学校受験するの?」
「うん」
「そっか…」
初めて自分の志望校を潤くんに告げたとき、潤くんは少し驚いたけどその後は何も聞かれなかった。
潤くんは僕の気持ちを察してくれたんだ…生まれた時からの付き合いだもんね。
潤くんには強豪校から声が掛かってるって聞いた。
潤くんからその事について直接話はなかったけど、きっとその話受けるんだろうな…長かった僕と潤くんの付き合いもあと数ヶ月で終わりか。
それから数ヶ月、僕は受験勉強に打ち込んだ。
そして受験前日、いつものようにふたりで歩く学校からの帰り道、別れ際に潤くんに質問された。
「カズ、明日何時に出るの?」
「ん~、早めに着いてた方がいいと思うから7時30分には家出ようかな」
「そっか…じゃあ、明日頑張ろうな?」
僕よりも5センチ以上大きくなった潤くんが僕の頭を撫でニカッと笑った。
「うん、ありがと…」
潤くんからパワーを分けてもらったみたい。
これで明日頑張れる…そう思ってたのに、翌朝玄関を出ると潤くんがそこに立っていた。
「おはよ、カズ!」
余りにビックリして声が出なかった…今までずっと僕が潤くんの迎えに行っていた。
だから朝自分の家の前で潤くんに会うなんて思ってもみなかった。
「カズ?」
潤くんが僕に近づき顔を覗き込む。
「なんで潤くん?」
「何が?」
「なんで潤くんがここにいるの?」
「なんでって、受験に行くからだろ?」
当然のように潤くんがそう言った。
「は?」
どういうこと?
「ほら、行くよ?遅れたら大変だ」
潤くんの手が僕の手を掴むと歩き出した。僕は引きずられるようについていった。