第17章 メガネの向こう側
「別に、泣き虫な翔さんを責めてる訳じゃないよ?
でも、俺だったらそう思うだろうな…いつまでも俺の為に泣くなよ、って。
だからさ、今回その人の声が聴こえなかったのって、その人も安心してくれたからじゃないかな?翔さんがやっと笑えるようになる、って」
「…ほんとにそう思ってくれてるのかな?」
「俺だったら絶対そう思う…俺が死んでも、翔さんには笑ってて欲しい」
翔さんは哀しそうな瞳で俺を見詰めた。
「…やだ…そんなこと思うなよ…」
「翔さん?」
「『俺が死んでも』なんて思うなよ…
もうひとりになりたくない…
またひとり残されるくらいなら、このまま一生ひとりでいた方がマシだ…」
苦しそうに言葉を吐き出す翔さんを見て、胸の中に引き寄せ思いっきり抱きしめた。
「ごめんっ!そんなつもりじゃなかった。
ただ、翔さんのことほんとに好きなら、翔さんの幸せを願うだろうなって思ったから…」
翔さんの腕が俺の背中に回り力が籠った。
「…俺の為を思うなら、俺より先に死ぬな…」
「うん、わかってる。大丈夫、安心して?
俺、翔さんよりも6才も若いんだから、翔さんより絶対長生きする」
「…なんか、そうハッキリ断言されるのもやだ…」
胸の中で顔を上げ、少し剥れた顔をする翔さんは、子供のようで可愛い。
「もうワガママなんだから…」
「ワガママな俺は嫌いか?」
わかってるクセに聞くんだ?
でも、安心させたいから、ちゃんと伝えるね。
「ううん、ワガママなところも含めて愛してる…」
そう答えた俺の目に飛び込んできたのは、俺が描いた翔さんの顔だった。