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恋歌 《気象系BL》

第17章 メガネの向こう側


「それだけ好きだったってことだろ?」

視線はそのままで小さく頷く翔さん…

「だから、あいつと同じ眼差しで俺を見るお前の存在が苦しかった…
あいつを忘れようと思ったことはない…寧ろ逆で、いつまでも忘れたくなかった。
でも、時間って恐ろしいな…記憶が薄れつつあったんだよ…
そんな時にお前の視線に気が付いて、あいつの眼差しを思い出したんだ」

翔さんは淡々と話していく…俺は、その話を静かに聞いてるだけ。

「なんかさ、お前の目見るたび、あいつに責められてる気がした…俺のこと忘れたのか?って…」

「そんなことないよ。人の記憶が薄れてくのは当たり前だろ?誰も責めないよ」

「わかってる…あいつがそんなことで責めるような奴じゃないってことも。
でも俺はそう思ってしまったんだ…
真剣に絵に取り組んでるお前を見てるうちに、惹かれはじまってたから…
自分で自分が許せなかった…
でも、お前に惹かれる気持ちが抑えられなくなってきて、自分でもどうにも出来なくなってきた時に、お前に好きだって言われたんだ。
駄目だって思う気持ちと、嬉しいって思う気持ちが押し寄せた…
この先もきっと俺は、ふとした瞬間にあいつを思い出す。こんな俺が、お前の気持ちに応えていいのかって。
それなのにお前は、事も無げに俺の過去ごと受け止めるって言った…
その言葉を真に受けていいのか悩んだよ…お前の心に傷を負わせたくなかったから」

翔さんが顔をあげ俺を見詰めた。

「でもお前は、諦めないって抱きしめてくれて…」

翔さんの大きな瞳から涙が溢れる。

「心臓が張り裂けそうなくらい苦しくて…
もう自分の想いから逃げられない、って思った…
それで、卒業式の次の日…あいつの、墓参りに行ったんだ。
ちょうど、あいつの命日だった…」

流れ続ける翔さんの涙を手で拭った。
苦しそうに、途中途中で声を詰まらせながら話す翔さん…
でも全部吐き出させてあげたくて、背中を擦りながら声を掛ける。

「翔さん、ゆっくりでいいよ…
ちゃんと全部聞くから…」
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