第17章 メガネの向こう側
「お待たせ、大野」
翔さんの声がして、慌ててスマホをしまった。
「もういいの?」
「うん。ふたりでなに見てたの?
凄い真剣な顔してたけど」
やばっ!見られてたか。
「今度ある展覧会の話してたんだよ。
勉強になるから是非見とけって、な?大野?」
「あっ、うんっ、そう!
いい絵は、見るだけで勉強になるから、な?相葉ちゃん」
「そうそう」
首を大きく振り頷く相葉ちゃんを見て、疑いの眼差しを向ける翔さん。
「なんか怪しいんだけど…」
「な、なにも怪しくないって…ほらっ、もう帰ろ?翔さん」
俺は椅子から立ち上がり、翔さんの背中に手を添え歩き出した。
「じゃあまたな、大野。翔ちゃんは、また明日」
「おう、色々ありがと。相葉ちゃん」
「それじゃ、また明日ね、雅紀」
少し怪しまれたけど、それ以上は追求されずに済んだ。
廊下に出ると、翔さんの背中から手を離した。
ほんとはずっと触れていたいけど、翔さんに変な噂がたったら嫌だから。
きっとこういうことなんだろうな『世間的に認められない関係』…
少しだけだけどわかった。
翔さんと、この先ずっと一緒に居たいなら、外での過剰なスキンシップは控えなきゃいけないんだ。
「大野、今から家に来てもらっていい?
昨日ちゃんと話せなかったから、今日は大野に聞いてもらいたい話がある」
翔さんが少し不安そうな瞳をして、俺のことを見詰めた。
「うん、いいよ」
翔さんに安心して欲しくて、俺は翔さんに微笑んだ。
どんな内容の話かはわからないけど、翔さんのことは全て受け止めるから…