第17章 メガネの向こう側
「大野、このあと時間ある?」
「うん、大丈夫だけど」
「じゃあ、少し待ってて。
もうすぐ仕事終わるから、一緒に帰ろ?」
「わかった。ここで待ってる」
「ごめんな、すぐ戻ってくるから」
「慌てなくていいよ。相葉ちゃんと話してるし」
「ありがと。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
翔さんの姿を見送り、相葉ちゃんの方に向き直ると、嬉しそうに微笑んでた。
「相葉ちゃん、どうかした?」
「いや、翔ちゃんの雰囲気が柔らかくなったなぁ、って思って…」
「柔らかい?」
「そう…優しいのは優しかったけどさ。あの事故以来、笑わないってこともあったし、なんか、バリア張ってる感じだったから。それが少し弱まった感じ」
「あ~、なるほどね…確かに警戒心の強い猫が、いくらかなついてくれたかなって感じはするよ。
まだ笑顔は見せてくれないから、完全になついてくれた訳じゃないけどね」
「まだ笑ってないの?
でもまぁ、焦ることはないだろ。大野のこと好きだって認めたんだから」
「うん…それだけでも大進歩だよな。あの人にしてみれば」
「そうだな…俺には2年掛けても出来なかったからな、翔ちゃんの笑顔を取り戻すこと。
大野、翔ちゃんのことよろしく頼むな?
もう2度と、翔ちゃんの悲しむ顔とか見たくないから」
「わかってるよ。俺もそんな姿見たくない…
絶対幸せにしてみせる」
「おー、頼もしいなぁ…エッチもその調子で頑張れよ?」
「せっかくいい話してたのに、なんで話がそっちにいくんだよ…」
「てへっ」
「『てへっ』じゃねぇよ…まったくもぉ…」
とか言いつつも、結局、翔さんが来るまで、相葉ちゃんと男同士のエッチについて、スマホを使い調べてしまった。
愛しい人を抱きたいと思うのは、男としては当然の事だよな?