第17章 メガネの向こう側
いつまで経っても涙が止まらない翔さんの手を引いて、外へ出た。
出きるだけ人のいない場所を探し、近くにあった公園へと入っていく。
春になって、ぽかぽかとした陽射しのなか、散歩道を歩く人の姿がちらほらと見られたが、その道から少し離れると、人気の少ない場所にベンチがあった。
翔さんをそこに座らせ、前に立つと、眼鏡を外し、溢れ続けてる涙をハンカチで拭いた。
「…意外…お前、ハンカチなんて持ち歩くんだ…」
目を真っ赤にさせて、泣きじゃくりながらそんなことを言う。
「泣いてるくせに、そんなとこ感心する?
なんかもっと他に話すことあるんじゃね?」
「うるさい…泣かせたのはお前だろ」
「はいはい、泣かせてスミマセン」
「…お前、チョイチョイ俺のこと馬鹿にしてるだろ…」
「してないよ。ただ翔さん頑固だから、俺が折れてあげなきゃ駄目なんだなっていうのはこの数ヵ月で学んだ」
「俺、そんなに頑固?」
さっきまで強気な言い方をしていた翔さんが、少し不安そうに俺を上目使いで見上げる。
「うん頑固…でも心配しないでいいよ?頑固だからって嫌わないから」
「そっ、そんなこと心配してないっ」
途端に顔を紅くさせて、そっぽを向く。
「はいはい、俺の勘違いだね」
翔さんがチラッとこちらを向いて、怪訝そうな顔をする。
「…なんで笑ってるんだ?」
「可愛いなぁ、って思って」
「だっ、だからそういうのがバカにしてるって言うんだよ」
真っ赤な顔をして、慌てて俺から視線を逸らす。
もうね、翔さんの考えてることなんて丸分かりで、笑顔なんかなくても可愛くて仕方ない。