第17章 メガネの向こう側
展示会場に着き、翔さんが立ち止まった。
「翔さん、どうしたの?」
「もう手を離せ。流石に、この中で繋いでたらおかしいだろ」
「そう?俺は平気だけど」
「お前と一緒にするな。普通は、男同士で手なんて繋がないよ」
「そうなの?恋人同士でも?」
「恋人同士でも!世間一般的に認められる関係じゃないだろ?」
「俺は他人の視線より、自分の気持ち優先させたいけどなぁ…
他人にどう見られようと、恋人と手繋ぎたい」
握っていた手に力を込めると、翔さんの顔はピンクに染まった。
「お前の考えなんて知るか…大体、俺とお前は、まだ恋人じゃないだろ」
「冷たいなぁ…でも翔さんの言う通りだしね?
今は『まだ』恋人じゃないから、離してあげるよ」
ニコッと笑い掛け手を離すと、翔さんはハッとして、慌てたように言い訳する。
「そういう意味じゃないから!」
「『そういう意味』ってどういう意味?」
そう聞き返すと、翔さんは何も言わず、ただ顔を紅く染めるだけ。
ほんと頑固だけど、素直な可愛い人。
「まぁいいか。後で、ゆ~っくり話そうね?
取り合えず今は、絵を見に行こう」
俺が歩き出しても歩き出す気配がない。
「逃げるなら、手繋ぐよ?」
振り返りそう言うと、慌てて歩き出し俺の隣に並ぶ。
ふたり一緒に、俺の描いた絵を探して歩いた。
「大野、まだ言ってなかったな」
「なに?」
「入選おめでとう」
「ありがと。でも翔さんのお陰で取れた賞だから、俺の方こそありがとう」
「俺のお陰じゃないよ。お前が描いたんだから、お前の力だろ?
俺はただ座ってただけだから」
「そうだよ?俺が描いたの。
でもさ、こんなに気持ちを込めて絵を描いたのはじめてなんだよね」
「気持ちを込めて?」
「そう…見て?」
足を止めて前を見る。
俺が愛情を注いで描いた翔さんの姿…あなたの目にはどう映る?