第17章 メガネの向こう側
作品展示が始まった週末。
俺は、展示会場近くの駅で翔さんが来るのを隠れて待っていた。
俺が呼び出したら来てくれないと思ったから、相葉ちゃんに呼び出して貰ったんだ。
翔さんは改札口から出て来ると、キョロキョロと周りを見回した後、柱の側に立った。
改札口を気にしている翔さんに気が付かれないように、そっと近付いていく。
「おはよ、翔さん」
勢いよく振り返る翔さん。
「なんでお前が…」
「酷いなぁ…相葉ちゃんに『大野の描いた絵見たくない?』って聞かれたから来たんでしょ?」
言葉に詰まる翔さん。
「翔さんが見たいと思ったから来たんだよね?」
「…お前が来るなんて聞いてない…」
「相葉ちゃんが来るとも言ってない。
相葉ちゃんはただ、絵を見たくないか聞いただけの筈だけど?」
「そんなの、狡い…」
「なにが?勝手に相葉ちゃんが来ると思ったのは、翔さんだろ?」
「お前が来るってわかってたら、来なかったよ」
「だから言わなかったんだよ」
「…狡い」
「はいはい、俺は狡い男だよ。でも、一緒に絵は見てもらうからね」
「えっ?」
翔さんの手を取り歩き出すと、翔さんが驚きの声を出した。
「ふっ、なにそれ冗談?」
「ち、違うっ!お前が手なんて握るから、驚いただけで…」
「だって、逃げるだろ?」
「逃げないから離せっ」
俺に引っ張られるように付いてくる。
「嫌だ。俺が繋ぎたいの」