第17章 メガネの向こう側
「なにわけのわからないことを…」
「だってそうだろ?俺が好きになったのは、笑顔を見せない先生なんだ。
相葉ちゃんから過去の話を聞いて、苦しい思いをしている先生を笑わせたいと思った…」
「それはお前が優しいから、俺を哀れんだだけだ。恋じゃない」
「恋だよ。
先生が言ったんだろ?自分じゃコントロール出来ないって。
あれから1ヶ月以上経つけど、俺の頭の中は、いつも先生で占領されてる」
櫻井は俺の胸に両手をつき、腕を突っ張った。
「大野…6才も年上で、問題抱えてる俺なんか相手にしなくても、お前に相応しい相手はいくらでもいるよ…
もうすぐ卒業だ。会うことがなくなれば、お前も一時の気の迷いだったんだってわかるから」
優しい瞳で俺に諭すように話しかける。
「じゃあ先生はどうすんだよ。この先、そうやってずっとひとりでいるのか?」
「心配するな…誰か好きな人が出来れば、その人と付き合うこともあるだろう…」
「それこそ無理な話だろ?ずっと恋人のこと忘れないって言ったよな?
そんな先生が、自分から誰かに『好きです』って言えるのか?
何だかんだ理由つけて、自分の心に蓋するんだろ?」
「そんなことない。好きな人が出来れば、ちゃんと自分から言えるよ」
「言えないよ。ううん、先生は言わない。
俺から逃げるために、そう言ってるだけだ」
「逃げるなんて、そんな…」
「逃げてるだろ?ほんとは先生も、俺のこと気になってるクセに」
「な、なに言って…」
櫻井の目が見開かれた。