第17章 メガネの向こう側
でも、どうするかなぁ…
『俺が櫻井を笑わせる』そう心に決めたけど、何をしたら櫻井が笑ってくれるのか、皆目検討が付かない。
「なぁ、先生…」
放課後、今日もふたりきりの美術室。
ニノが気を使ってくれて、これからは櫻井が居る時は、図書室で時間を潰してくれることになった。
相葉ちゃんにも何か適当に理由をつけて、此処へは来ないようにしてくれるそうだ。
「ん?」
声を掛けると、窓の外に向けていた視線を俺に向けてくれる。
「先生ってさ、楽しいこととか嬉しいことってなに?」
やっぱり、笑う為に必要なことは、楽しいか嬉しいだよな。
「『楽しい』はわからないけど、『嬉しい』は、生徒の皆が、目標を達成させた時かな」
目標達成って、受験合格とかだよな…
俺、もう合格しちゃってるから、それで喜ばせるのは無理か…
「大野の場合だと、絵で成績残すとか?」
「え?」
急に俺のことを言われ驚いた。
そうか、受験合格だけが目標達成じゃないもんな。
「ふっ…なにお前、今のダジャレ?
それとも本気で驚いたの?」
「あ、いや、本気で驚いたんだけど…」
そんなことより、ちょっと待て。
今、櫻井の口元弛んだよな?
俺の見間違いじゃないよな?
「先生、今、笑ったよね?」
「え?あ…お前がダジャレ言ったのかと思ったのに、顔が驚いてたから、たまたまだったのかと思ったら可笑しくて」
櫻井もキッカケさえあれば、ちゃんと笑えるんだ…
そして、俺が櫻井を喜ばす方法もわかった。
だったら俺がやることは決まったな。
「先生、お願いがあるんだけど」
「なんだ?また何か相談か?」
「ううん、違う。
先生、眼鏡外して?」