第17章 メガネの向こう側
「…出来ない、と思う…
でも、だからって、俺に何ができんだよ…」
「さぁ?それは智が考えることだろ?
俺が考えることじゃないよ…
でも、動かなかったら、何も始まらないんじゃないの?翔ちゃんのあの様子じゃ、誰かが手を差し出さないと、いつまでもあのままだよ?」
そうだよな…
あんだけニコリともしない櫻井が、自分から新たな幸せを求めると思えない。
だったら、誰かが手を差し出す前に、俺が櫻井を笑わせてやる。
「わかったよニノ。俺、頑張ってみる!
櫻井の笑顔を最初に見るのは俺だ!」
「うん!頑張れ!その熱さで、翔ちゃんの氷のレンズ溶かしちゃえ!」
「おう!
ところで、お前はどうすんだよ?人のことばっか気にしてるけど」
「俺?俺はもう予約済みだから」
ニノがニコッと笑った。
「なに?予約済みって?」
「だから、相葉ちゃんの恋人の席、予約した」
「は?いつの間に?
それになに?予約って」
「コクったのは先週。
高校卒業したら付き合ってくれる、って言うから『じゃあ予約ね』って」
「卒業したらか…
それにしても、よくいけたな?怖くなかった?
相葉ちゃんが、男受け入れるか、わからなかっただろ?」
「ん…でも勝算はあったよ?
この前話したときに、告白してくれた人は基本的に受け入れるって言ってたし。
翔ちゃんの恋人の話したときに、『お似合い』って認めてたから、男同士の付き合いに偏見は持ってない、ってわかった。
それでも、最初は『生徒と教師だから駄目』って言われて、『だったら卒業したら付き合って』って押しきった」
「スゲェなニノ、お前の事、見直したわ。
そんな行動派だったなんて…」
「ふふっ。それだけ、相葉ちゃんを誰にも渡したくなかったんだよ」
幸せそうに笑うニノ。
よっしゃあ!俺も頑張ろ!