第17章 メガネの向こう側
「うん、ごめん先生…もう絶対居眠りなんかしないから」
「わかって貰えてよかった」
櫻井の声がいつもより優しく聞こえた。
ただ表情は相変わらず、ニコリともしてくれないんだけど。
でも、相葉ちゃんが言ってたこと少しだけわかった気がした…
櫻井は冷たく見えるけど、生徒思いの優しい先生なんだ。
勉強だけじゃなく精神面も考えてくれてる…
それに生徒のことをよく見てる。
ニノのことをそつなくこなすって言ってたし、俺のことも目指すものがあるって言ってくれた。
勉強はお世辞にも出来る方とは言えない。でも絵だけは真剣に向き合ってきた…本気で将来、絵に携わる仕事がしたいと思ってる。
その事をちゃんと知ってくれてたんだ。担任でもないのに…
「時間だ…仕事に戻らせて貰うぞ」
櫻井が椅子から立ち上がったから、俺も慌てて立ち上がった。
「あ、櫻井先生…明日も来てくれる?」
「中途半端なことはしたくないからな。
モデルが必要なうちは来てやるよ」
「ありがとう、先生」
「じゅあな、頑張れよ」
「さよなら…」
櫻井の姿が消えるまで、その背中を見送った。
「智、もう翔ちゃんの姿見えてないけど、いつまで見てんの?」
「え、あ…」
なんでだろ…ずっと見ていたかった。
もっと色々櫻井のことを知りたいと思った。
綺麗な表面だけじゃなく、内側を知りたいと思ったんだ。
そして見てみたいと思った…
あの綺麗な顔に笑顔が浮かぶところを…